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イベントレポート–SDGs高松勉強会

SDGsメールマガジン Vol.6(2014年1月9日発行) イベントレポート
一般社団法人 環境パートナーシップ会議


持続可能な開発目標セミナーin高松
つなげよう!日々の暮らし・活動×持続可能な世界の開発と行動
~地域の課題と、地球規模の課題のつながりから~
2013年12月8日、高松市男女共同参画センター



 12月8日(日)に高松市にて、主に生物多様性問題に取り組んでいる地域のNGOを対象とした地域勉強会が開催されました。以前から四国では地域の自然や環境を守ろうと、特に生物多様性の保全に関わる活動が大変盛んです。地球規模の環境問題や持続可能な開発目標(SDGs)と地域が直面する様々な課題をリンクさせ、地域で必要な活動とその経験をどのように世界中に発信するかについて勉強会が行われました。参加者は、四国各県から環境活動や地域活性化に取り組んでいる活動家約30名が集いました。

 冒頭に、環境パートナーシップ会議の星野智子より「地域の課題と、私たちの暮らし・活動との関わり」という題名で基調講演がありました。最初にお弁当や地球温暖化を例に私たちの日々の暮らしと世界中のいろんな問題がどのようにつながっているか、また逆に地球規模の問題が私たちの暮らしとどのようにつながっているか問題提起がありました。問題解決のために、国連を中心とした国際社会レベルの取り組みや、地域を中心とした個人レベルの取り組みが多く行われていますが、様々な問題が複雑に絡み合っているので一緒に協働していく必要があると述べました。特に日本は、国際社会において経済大国として、また大規模の生産・消費国として世界に与える影響が大きいですが、地域が変われば日本が変わり、日本が変われば世界が変わるので、アジアの一国としての日本の伝統文化や考え方を大事にして、世界中に発信していく必要があると強調しました。
 このような現状を踏まえて昨年行われた国連持続可能な開発会議(リオ+20)を振り返りましたが、まず大きな進展の一つとして、開発分野のイシューだった貧困撲滅と環境分野のイシューだった持続可能性が一緒になってきていることをあげました。またリオ+20に向けた国内取り組みとして、Rio+20地球サミットNGO連絡会の取り組みの紹介も行われました。リオ+20に向けた活動を振り返ったうえで、様々なレベルにおいて市民との関わりを大切にし、一緒に持続可能な社会をつくっていくことが重要であることを強調して結びとなりました。

 また、環境パートナーシップ会議の北橋みどりより、リオ+20についてさらに詳しく振り返り、持続可能な開発目標とは何かについて説明がありました。国連史上最大規模であったリオ+20では、主にグリーンエコノミーや持続可能な開発を実現させるための制度的枠組みの改革について議論されました。その成果物である「私たちが望む未来(The Future We Want)」にて、持続可能な開発目標(SDGs)に関する検討を始めることが明言され、今年の1月に正式に公開作業部会(OWG)が設立されました。このSDGsを通じて持続可能な開発を実現するために、環境・経済・社会の調和をどのように進めるか検討する予定です。特に、既存の枠組みであるミレニアム開発目標(MDGs)が主に途上国を対象とした目標を設定したことで先進国である日本ではあまりなじみがなかったという声も存在することを踏まえ、SDGsは途上国のみならず先進国も含め課題解決に向けて取り組む必要があると強調しました。

 次に、環境パートナーシップ会議の姜そんうより、11月末にニューヨークで行われた第5回SDGsに関する公開作業部会(OWG5)の参加報告がありました。今回のOWG5のテーマであったマクロ経済政策やエネルギーに関する議論の紹介のほか、SDGsについて議論するプロセスに参加するための方法についても紹介がありました。特に今回の勉強会の参加者の中では生物多様性問題に関心を持ち活動している方が多いことから、2月に行われる第8回会議(OWG8)に向けた情報が中心となって紹介されました。

 以上の報告を終えディスカッションに入る前に、四国各県で行われている関連の取り組みの紹介がありました。まず公益財団法人黒潮生物研究所の岩瀬文人さんより、高知県での活動について紹介がありました。岩瀬さんが暮らしている街はおそらく「日本一番の田舎」ではないかということで、自然再生の活動をやりたくても人がいないことが深刻な問題であり、若い人がどんどん都市に出て行ってしまって一次産業、特に漁業ではもうお金が稼げない状況になっているとのことでした。70世帯以上が暮らしている集落で漁をやっている人は5人しかおらず、あと10年すれば誰も漁をやらなくなるだろうということでした。また、「インターネットを通じて意見提示ができる」と言われても、集落全体でインターネットに接続できるのは3軒しかないため、地域からすればできることは本当に限られているとのことでした。このような状況を踏まえて、国際的な問題と地域の課題をどのようにつなげるか考える必要があると、話題提供をいただきました。
 また、四国生物多様性ネットワーク事務局の谷川徹さんより、四国全体の生物多様性問題に関連する取り組みからの経験について紹介がありました。谷川さんが暮らしている地域は、「岩瀬さんの話を山奥の百姓に置き換えたら全く同じ」と挙げ、厳しい状況を明らかにしました。そのような地域に暮らしている人々の一番の思いは「幸せになりたい」、「持続可能で安定な暮らしをしたい」ということで、私たちが当たり前のように感じていることも時折できず、そのような不便や暮らしの大変さが、人々を持続可能にさせず都市へ移ってしまうとのことでした。例えば、ある年の大晦日に大雪が降って送電線が切れてしまい、楽しみにしていた紅白歌合戦を見ることができなかった地元の人が「もうこんなところには住みたくない」といい、町長はそれを聞いて「送電線に掛かりそうな木は全て切ってしまえ」と怒ったこともあったようで、岩瀬さんの話と同じように、地域の課題とまとめられることも多いが地域の中にはこのように思いもつかないようないろんな問題を抱えているとのことでした。
 次に、生物多様性とくしま会議の新開善二さんより、徳島県での生物多様性保全や特に環境教育を通じた地域の活動について紹介がありました。最初の発言で「生物多様性の問題であれ、持続可能な開発のための教育(ESD)であれ、SDGsであれ、地域にとってはすべて同じ」ということで、結局は地域が直面している課題を一つひとつ解決していくことで持続可能な社会が達成できるという考えを披露しました。徳島県では、今年10月に生物多様性とくしま戦略(副題:地域資源としての生物多様性を活かしたコンパクトな循環型社会の形成)ができましたが、その実践のために市民宣言を作って市民に広げているそうです。生物多様性とくしま会議としては、このような生物多様性の取り組みに中に環境教育やESDの観点も入れて活動を展開しているとのことでした。地域の人々が生物多様性の保全に関心を持ち持続可能な自然生態系の維持や保全に関わることで、それが持続可能な生活や暮らしに最終的につながり、持続可能な社会の実現につながります。具体的には、阿波の国である徳島県は食文化の宝庫であり、食文化を通じて持続可能な暮らしについて考える勉強会を実施することで、上記の流れを達成しようと活動を行うほか、これからの時代を担っていく若者、特に大学生に着目して大学生向けのイベントの実施や、山歩きや吉野川をテーマとした話し合いの場を設けているそうです。
 最後に、森からつづく道事務局の黒河由佳さんより、愛媛県での取り組みについて紹介がありました。「森からつづく道」は、植物などを研究していた人々の、地域の人々に森や周りの自然環境の大切さを伝えたいという思いからできたそうで、現在は愛媛県と共同で地域の生き物を観察する「いきものマスター」のプロジェクトなどさまざまな活動を行っています。その現場から感じている危機感としては、生物多様性が最も豊かな地域は、自然と人々の暮らしの接点である棚田や水路ですが、最近は耕作放棄で荒廃化していきものや生物多様性が失われていくことが目に見えているようです。このようにいきものや生物多様性が失われていけば、その大切さを体験する機会自体が減っていき、問題を感じ考える機会そのものが失われる可能性があると強調しました。また、日本の食料自給率は40%を切っていて、60%以上を海外から輸入していますが、そのために食料を輸出している国では伝統的な農作法や漁業のやり方が単一的なものに置き換わっていて、自然農家で体験の機会が身近にある四国・愛媛として、体験の機会を増やしていくことが重要であると認識して、今後も活動を進めていきたいとのことでした。

 以上の各地域からの話題提供を踏まえて、続いてディスカッションが行われました。ディスカッションでは、国際的にSDGsができることを念頭に入れつつ、地域では何が必要で何をやる必要があるのか、また社会的なルールづくりができるとしたらその機会をどのように活用していくかについて議論しました。
 まずは、リオ+20の会議自体に対する質問が多く出ました。グリーンエコノミーに対する各国の印象や、先住民族や文化に関連する質問や意見がありました。グリーンエコノミーが多くの国から支持を得られなかった理由として、グリーンエコノミーが先進国主導で議論される過程で途上国が新たな貿易や経済の障壁としてグリーンエコノミーを感じたほか、あまり環境保全やその改善につながらない事業をグリーンエコノミーに見せかえる「グリーンウォッシュ」に対する懸念もあったとのことでした。また、国際的に先住民族が南北問題の構図の中で語られることが多いが、国内でも中央と地域で似た対立があることに触れ、地域で人々ががんばっているのになぜ儲からないのか、その構造的な課題について触れました。また、OWG5での議論にも話が触れ、SDGsに関する議論や気候変動枠組条約での議論が行き詰まり感を出していることについても議論がありました。
 また、SDGsに対する期待や憂慮のコメントもありました。近年、次から次へと新たな枠組みやコンセプトが作り出されていて、新しい人々を巻き込むには新しいコンセプトが必要かもしれないが、新しいものができてしまうと前のことをやっていた人々が支援を受けることができなくなってしまっているようで、以前まで取り組んでいたことが流されないような仕組みが必要であるとのコメントがありました。反面、SDGsなど社会内の複数の分野にまたがるものに対して省庁間でうまく連携できていないこと、環境NGOとして地域に根付いて活動するためには地方自治体との連携が重要であること、また海外では政府とNGOの間できちんと連携していることが多いことに触れた上で、SDGsは今後長い間議論され活動を実施する必要があることを踏まえて、様々なレベルで対話する場を設ける必要があることについても議論がありました。
 ディスカッションの最後に、主催団体の一つである四国環境パートナーシップオフィス(四国EPO)の常川真由美さんより、「今回がお披露目の機会となり、今後SDGsのみならず様々な取り組みに関してきちんと政府に地域の意見を伝えつつ、地域の中でも地域ミーティングやアクションプランなどの仕組みを作っていきたい」とのコメントをいただき、終了しました。

◆開催概要
日時:2013年12月8日(日)10:00~12:00
会場:高松市男女共同参画センター第3会議室
対象:本テーマに関心のある方ならどなたでも(30名程度)
主催:環境パートナーシップ会議(EPC)
   四国EPO(四国環境パートナーシップ会議)
協力:地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
※当イベントは、平成25年度地球環境基金の助成を受けて実施しました。


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