インタビュー あの人に聞きたい!Sascha Gabizonさん(女性MG・OP)
女性メジャーグループ・オーガナイジングパートナー
Sascha Gabizonさん
(Excecutive Director WECF/WICF)
◎女性メジャーグループの活動について教えてください。
アジェンダ21にて設定された9つの「メジャーグループ」のひとつで、94年の国際人口開発会議(カイロ)、95年の世界女性会議(北京)など、国際会議の場で慣習的に「Women’s Caucus(女性コーカス)」と呼ばれる会合を開催し、情報共有や戦略会合を行ないながら精力的に活動しています。
普段のコミュニケーションは主にメーリングリストを活用して行なっていますが、リオ+20を契機に登録メンバーが増え、現在約500人が参加しています。メジャーグループの運営は、複数の幹事団体によって行なわれていて、南北のバランスを配慮し、今年は私の他にフィリピンのDAWNというNGOのAnita Naverがオーガナイジングパートナーを務めています。
◎女性メジャーグループ中での情報共有や連携強化のために、心がけていることは?
メーリングリストを活用した情報共有はもちろんのこと、Women’s Caucusでの情報・意見交換では、毎回短い自己紹介の時間を設けて、初めて参加する人でも参加しやすい環境づくりにつとめています。声明文を作成する時には、テーマごとに担当者(リード役を務めるグループメンバー)を決めてその人たちが原案をつくり、それをもとにスカイプ会議を設定して、話し合うなど、できるだけ皆が意見を表明できる場をつくるように心がけています。UN Womenなど国連機関との交友も大切にしています。
◎SDGsの策定プロセスにおいて、どんなことを大切にしたいと思っていますか?
ジェンダーは分野横断型の課題ですので、他のメジャーグループともパートナーシップを持って行動したいと思っています。女性メジャーグループには先住民族や労働組合といったメジャーグループにも所属するメンバーが参加していますから、そういった意味では、部分的には他のメジャーグループとのパートナーシップを発揮できる側面もありますが、現在はかなり、個人の素質に委ねられているところが大きいです。全てのテーマにおいて、こういった連携の動きがとれるように目指していきたいですし、他のテーマに取り組んでいる人たちにもジェンダーの主流化をアピールしていきたいです。
◎現在のSDGs策定プロセスを、どのように評価していますか?
OWG(Open Working Group)の開催期間中、毎朝9時から10時の一時間、共同議長とステークホルダーの意見交換の場(Morning Calling)が開催されています。ここは、各国代表も参加が可能で、実際に多くの人たちが参加しており、ステークホルダーの参画を促す場として機能していると評価しています。OWGでは、各国の代表が、用意された文書を読むのではなく、テーマに関するさまざまな意見を自由に交換する場となっているのが特徴です。OWGは実交渉ではないため無駄だと批判する人たちもいるが、さまざまなイシューや視点に触れ、学び合う、教育的な場として、個人的には評価しています。OWGのプロセスが終了したのちは、政府間の交渉プロセスに入っていきますが、そこでは、ステークホルダーの参加がどのように保障されるかは定かではありません。今後、参加の場を確保していくためにも、OWGを上手に活用し、自分たちの参加の場の確保や意見の反映について働きかけることが重要です。
◎現在の国連の議論を、「パートナーシップ」の観点からどう評価しますか?
全体的に、民間セクター(ビジネスセクター)へのフォーカス・依存度が高すぎるように思います。国連は企業との一定距離を保つべきです。巨大多国籍企業のいくつかは影響力が非常に大きく、国家の政策にまで影響を及ぼしています。例えば、オーストラリアは煙草の規制を強化しようとしてフィリップモリス社に訴えられました。企業が力を持ちすぎた(Too big to fail, jail:大き過ぎてつぶせない、投獄できない)状況に対する対策が求められていると思います。
企業とのパートナーシップを推進するにあたっては、透明性に関する規定をしっかり設けることが重要。なにより忘れてはならないのは、公平なパートナーシップは、平等なパワーバランスのもとに成り立つものだということです。これは、企業とNGOの関係にも言えることであり、女性や先住民族、若者についても言えることだと思います。
一つ言えることは、ニューヨークを中心に会議が展開されていることが、市民の参加を難しくする一因ともなっているのではないかと言うことです。今回の国連総会に合わせてIBON(フィリピン)が開催したPeoples General Assemblyのように、市民社会の声を集めるためのよい試みはあるのですが、その会議に参加しようにも、ニューヨークは遠過ぎ、高過ぎです。
◎Post2015/SDGsの議論をどのように評価していますか?
MDGsの ハイレベルパネルレポートにおけるGender EqualityやSexual Reproductive Health, Rightsについての文言は悪くなかったと評価しています。ただし、経済変革や租税正義(Tax Justice)、企業のアカウンタビリティー、貿易協定などに関する扱いがしっかりなされていないことが不満です。また、国連事務総長の「Sustainable Energy for All」において、原発に関する批判的検討がなされていないことも問題だと思います。健康に関して言うと、公害などを原因とした非伝染性疾病問題は重要課題であると思っています。(詳細:ステートメントへのリンク)
◎今後への期待:
リオ+20では、「自然の権利」のような、サステナビリティに関する重要な視点が打ち出されました。持続可能な技術、持続可能な農業など、まだまだ考慮されるべき重要な点は多くあると思います。2015年まで残された時間は僅かだが、よりよい成果を導きだす上ために、よいパートナーシップが構築され機能することを期待したいと思います。
日本政府は、生物多様性条約のCOP10や気候変動枠組条約の京都議定書など、日本は国際交渉の場で重要な役割を果たしてきました。リオ+20やその後の提言文の作成にも、(原発・エネルギーなど)日本のメンバーが積極的に意見を表明してくれています。福島での体験も踏まえ、日本がSDGsの成功のために役割を果たしていくことを期待したいです。
参考 Women’s Major Groupのホームページ http://www.womenrio20.org
協力:国連大学
Sascha Gabizonさん
(Excecutive Director WECF/WICF)
◎女性メジャーグループの活動について教えてください。
アジェンダ21にて設定された9つの「メジャーグループ」のひとつで、94年の国際人口開発会議(カイロ)、95年の世界女性会議(北京)など、国際会議の場で慣習的に「Women’s Caucus(女性コーカス)」と呼ばれる会合を開催し、情報共有や戦略会合を行ないながら精力的に活動しています。
普段のコミュニケーションは主にメーリングリストを活用して行なっていますが、リオ+20を契機に登録メンバーが増え、現在約500人が参加しています。メジャーグループの運営は、複数の幹事団体によって行なわれていて、南北のバランスを配慮し、今年は私の他にフィリピンのDAWNというNGOのAnita Naverがオーガナイジングパートナーを務めています。
◎女性メジャーグループ中での情報共有や連携強化のために、心がけていることは?
メーリングリストを活用した情報共有はもちろんのこと、Women’s Caucusでの情報・意見交換では、毎回短い自己紹介の時間を設けて、初めて参加する人でも参加しやすい環境づくりにつとめています。声明文を作成する時には、テーマごとに担当者(リード役を務めるグループメンバー)を決めてその人たちが原案をつくり、それをもとにスカイプ会議を設定して、話し合うなど、できるだけ皆が意見を表明できる場をつくるように心がけています。UN Womenなど国連機関との交友も大切にしています。
◎SDGsの策定プロセスにおいて、どんなことを大切にしたいと思っていますか?
ジェンダーは分野横断型の課題ですので、他のメジャーグループともパートナーシップを持って行動したいと思っています。女性メジャーグループには先住民族や労働組合といったメジャーグループにも所属するメンバーが参加していますから、そういった意味では、部分的には他のメジャーグループとのパートナーシップを発揮できる側面もありますが、現在はかなり、個人の素質に委ねられているところが大きいです。全てのテーマにおいて、こういった連携の動きがとれるように目指していきたいですし、他のテーマに取り組んでいる人たちにもジェンダーの主流化をアピールしていきたいです。
◎現在のSDGs策定プロセスを、どのように評価していますか?
OWG(Open Working Group)の開催期間中、毎朝9時から10時の一時間、共同議長とステークホルダーの意見交換の場(Morning Calling)が開催されています。ここは、各国代表も参加が可能で、実際に多くの人たちが参加しており、ステークホルダーの参画を促す場として機能していると評価しています。OWGでは、各国の代表が、用意された文書を読むのではなく、テーマに関するさまざまな意見を自由に交換する場となっているのが特徴です。OWGは実交渉ではないため無駄だと批判する人たちもいるが、さまざまなイシューや視点に触れ、学び合う、教育的な場として、個人的には評価しています。OWGのプロセスが終了したのちは、政府間の交渉プロセスに入っていきますが、そこでは、ステークホルダーの参加がどのように保障されるかは定かではありません。今後、参加の場を確保していくためにも、OWGを上手に活用し、自分たちの参加の場の確保や意見の反映について働きかけることが重要です。
◎現在の国連の議論を、「パートナーシップ」の観点からどう評価しますか?
全体的に、民間セクター(ビジネスセクター)へのフォーカス・依存度が高すぎるように思います。国連は企業との一定距離を保つべきです。巨大多国籍企業のいくつかは影響力が非常に大きく、国家の政策にまで影響を及ぼしています。例えば、オーストラリアは煙草の規制を強化しようとしてフィリップモリス社に訴えられました。企業が力を持ちすぎた(Too big to fail, jail:大き過ぎてつぶせない、投獄できない)状況に対する対策が求められていると思います。
企業とのパートナーシップを推進するにあたっては、透明性に関する規定をしっかり設けることが重要。なにより忘れてはならないのは、公平なパートナーシップは、平等なパワーバランスのもとに成り立つものだということです。これは、企業とNGOの関係にも言えることであり、女性や先住民族、若者についても言えることだと思います。
一つ言えることは、ニューヨークを中心に会議が展開されていることが、市民の参加を難しくする一因ともなっているのではないかと言うことです。今回の国連総会に合わせてIBON(フィリピン)が開催したPeoples General Assemblyのように、市民社会の声を集めるためのよい試みはあるのですが、その会議に参加しようにも、ニューヨークは遠過ぎ、高過ぎです。
◎Post2015/SDGsの議論をどのように評価していますか?
MDGsの ハイレベルパネルレポートにおけるGender EqualityやSexual Reproductive Health, Rightsについての文言は悪くなかったと評価しています。ただし、経済変革や租税正義(Tax Justice)、企業のアカウンタビリティー、貿易協定などに関する扱いがしっかりなされていないことが不満です。また、国連事務総長の「Sustainable Energy for All」において、原発に関する批判的検討がなされていないことも問題だと思います。健康に関して言うと、公害などを原因とした非伝染性疾病問題は重要課題であると思っています。(詳細:ステートメントへのリンク)
◎今後への期待:
リオ+20では、「自然の権利」のような、サステナビリティに関する重要な視点が打ち出されました。持続可能な技術、持続可能な農業など、まだまだ考慮されるべき重要な点は多くあると思います。2015年まで残された時間は僅かだが、よりよい成果を導きだす上ために、よいパートナーシップが構築され機能することを期待したいと思います。
日本政府は、生物多様性条約のCOP10や気候変動枠組条約の京都議定書など、日本は国際交渉の場で重要な役割を果たしてきました。リオ+20やその後の提言文の作成にも、(原発・エネルギーなど)日本のメンバーが積極的に意見を表明してくれています。福島での体験も踏まえ、日本がSDGsの成功のために役割を果たしていくことを期待したいです。
参考 Women’s Major Groupのホームページ http://www.womenrio20.org
協力:国連大学
この記事の添付ファイル | |||
ファイル名 | 掲載日 | ヒット | |
SDGsメルマガSaschaWMGOPインタビュー原稿.pdf | 2013-11-7 | 414 | |