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【レポート】 リオ+20第1回非公式会合

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◆Rio+20 ゼロドラフト・コンサルテーション 出張報告 1月25日-26日 NY、国連本部

地球サミット2012Japan 政策提言チームリーダー/リオ+20 地球サミットNGO連絡会 幹事 
服部 徹

0.はじめに

 本稿では、読者の皆様が、国連の議論にいち早くキャッチアップでき、今後のRIO+20へのプロセス参加をスムーズにできるよう、今回の各国の国際交渉の概況を共有するとともに、知るべき議論や情報の要所について紹介を行ってゆくことにする。

 ゼロドラフトとは、以下のような構成となっている。
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I. 序文/舞台設定
II. 政治的コミットメントの更新
 A.リオ原則と過去の行動計画の再確認
 B. 持続可能な開発に関する主要サミットの成果の実施におけるこれまで の前進及び残されたギャップの評価並びに新たな課題への対応(統合、実施、一貫性)
 C. 主要グループの関与
 D. 行動のための枠組み
III. 持続可能な開発及び貧困撲滅に関連するグリーン経済
IV. 持続可能な開発のための制度的枠組み
V. 行動とフォローアップのための枠組み
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 リオ+20の事務局が重視しているのは、「グリーンエコノミー、グリーン雇用による貧困根絶」、「食糧安全保障と持続可能な農業」、「エネルギー」、「水」、「持続可能な都市」、「海洋管理」、「レジリエントな社会:自然災害対策と社会の対応力の改善」である。

▽ゼロドラフトの翻訳と要旨は、以下から読める。
 http://earthsummit2012.jp/un/zerodraft.html

 必ずしも意欲的とは言えないが、無難なたたき台といえる。議論を誘発する目的からか?、記載に濃淡があり、全大企業は持続可能情報を報告すべきだという強いメッセージが入っている一方、生物多様性・愛知目標の記載を漏らすなど、至るところに、メジャーグループにとってはいろいろと突っ込みたくなる、忘れ物もある。
 「Stakeholder Forum」では、さっそく、このドラフトを分析し、6,000ページあったはずのインプットのうち単語の頻出度の比較を行い、反映されているかを分析して、交渉に入る各ステークホルダーの担当者を情報面で支援していた。

▽「Stakeholder Forum」の分析
 http://www.stakeholderforum.org/sf/index.php/our-publications/reports-in-our-publications/406-analysis-of-zero-draft-submissions

 なお、日本政府は、各省庁からのイニシアチブの取りまとめ「持続可能な開発実現に向けた9つの日本提案」として「防災」、「エネルギー」、「食糧安全保障」、「水」、「都市」、「持続可能な開発のための教育」、「全球地球観測システムのシステム(GEOSS)」、「技術革新とグリーン革新」、「生物多様性」の9つを事務局に提案した。このうちゼロドラフトには、「全球地球観測システムのシステム(GEOSS)」を除くと、ほとんどが取り上げられていた。

▽日本政府のインプット(2011年10月)
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/23/10/1031_05.html


1.初日~2日目午前

 1日目及び2日目の午前は、ゼロドラフトへの一般的コメントだ。

 持続可能な開発に関する新たな政治的コミットメントとして、何を出すのか?について、また、「持続可能な開発」や「グリーンエコノミー」について様々な意見が出された。
 大きな構図は、EUを中心にした先進国群 VS 途上国グループである。
最も先鋭的な環境ガバナンスを訴えるEUをはじめとする、その考え方を濃淡の差があれサポートする先進国は、「持続可能性」のための「環境対応」を進めることを重視している。すなわち、このまま途上国が皆豊かになれば、地球は持たないのではないかを心配している。このため、今スグ行動したいという、「より行動指向的でメッセージ性のある」成果文書を要望していた。政府セクターによる公共財管理を是認しているEUは、「UNEPの専門機関化の必要性」も訴えていた。
 一方で、途上国グループ(G77+中国)の関心は、GDP比0.7%をODAに当てるあどの「過去のコミットメント」の履行に関する評価を述べていた。つまり、約束は守っていないのではないか?と。そして、途上国への追加的な資金の提供、技術移転などの具体的な貧困撲滅と経済成長のための行動が必要だと主張した。


▼ステートメントを読み上げるカザフスタン代表(第3会議室のスクリーンから)

▽ゼロドラフトに対する、当日の各国からのステートメント(英語)
 http://www.uncsd2012.org/rio20/index.php?page=view&nr=333&type=12&menu=46&template=435

 今回の交渉にあたって、「共通の課題に世界が共に取り組む前向きの成果文書とする」ために、臨んだとのこと(外務省)。
 日本からのメッセージは、グリーンエコノミーを人間中心に捉え、ステップバイステップで、もっと野心的な成果を出すべきだとの主張であった。
▽日本政府のステートメント(英語)
 http://www.uncsd2012.org/rio20/content/documents/679japan2.pdf


2.2日目の午後及び3日目 

 2日目の午後及び3日目は、「成果文書交渉」であり、ゼロドラフトのⅠ、Ⅱ部分に対する、ドラフティングだ。
 Ⅰ、Ⅱ部分は、過去の総括と、現状認識と今後への心意気の部分である。
 パラグラフごとに、意見をどんどん聞いて、ドラフティングを進めてゆく。
 2日目の午後から、3日目の午前9時~10時までで、第1ラウンドが終了した。 
 第1ラウンドでは、自らの主張の正当性と修正点を提案した。
 途中、共同議長が、「自らの主張の正当性」の演説が長すぎることを懸念し、修正ポイントに絞って発言するよう促した。
 ゼロドラフトを政治的に環境にもっと意欲的にしたいEUと、環境の前に、開発への援助を重視する途上国グループから多くの追加・修正提案が入った。
 日本からの提案の一例は、成果文書のタイトルを、「THE FUTURE WE WANT」から「RIO COMMITMENT TOWARDS GREEN ECONOMY」に変えようとするなど、より具体的なコミットメントを打ち出そうとするものであった。

 3日目の10時~3時が、交渉タイム。


▼交渉の様子

 気候変動枠組み条約等で顕著になってきた、先進国と途上国の議論の隔たりが第一ラウンドで明らかになった形だが、「共通だが差異ある責任」に関する議論をどのように収束させるのか?交渉タイムは5時間である。はじめは交渉する人々もあったが、徐々に、会議室から人が減っていってどこかへ消えていった。
 デリゲートの一部はホテルまで戻ってチームで作戦会議をしていたようである。
 NGOにとっては、長いランチタイムであった。

 この交渉タイムの間に、「SDGs(Susutainable development goals)」を提案した、コロンビアが、緊急サイドイベントを開催した。
▽SDGsに関するコロンビアの提案
 http://www.uncsd2012.org/rio20/content/documents/colombiasdgs.pdf

 小さな会場は、すぐに人が溢れて、二重・三重の立ち見の人垣が出来た。
 SDGsとは、途上国が持続可能な開発を経済成長をしつつゴールに向かって達成できているかの行動進捗を測るフレームワーク(枠組み)である、とコロンビアの交渉官は、説明したあと、質疑を募った。
 質問者の多くがこの考え方に賛同するとともに、さらなる具体的な絵姿や内容を固めてゆくためのプロセスを質問した。
 しかし、残念ながら、コロンビアの交渉官はそわそわしながら、質問はいずれもすばらしく参考になるものばかりと謝辞の総括を述べた上で、個別の回答および具体的内容を明らかにせず「行動のフレームワーク」であり「議論をしながら合意形成をして決めてゆく」と抽象的な回答をした上で、サイドイベントを時間になったとして打ち切った。このため、参加した参加者は「???」に包まれたまま、会場を去ることになった。

 3日目の3時~6時が、第2ラウンドであった。
 第2ラウンドでは、まず、共同議長が、「歩み寄りや交渉の成果」を問うたが、ほとんど意見が出なかった。
 この結果、すぐに、議長は質問を止めてしまい、場に自由に発言するように、返してしまった。
 その結果、発言は続々と出たが、他国の提案への質問やとり急ぎのコメントが中心であり、序盤戦なので、互いに歩み寄ることなく、言いたいことを言い放ったという感があった。
 先進国も一枚岩というわけではない。持続可能というコンセプトに前向きで押さえ込みで勝利したいEUに対して、基本は政治ではなく民に任せるべきでなるべく政府の約束事を増やしたくないアメリカ合衆国の消極性が目立った。一方、スイスは国だけではなくもっとステークホルダーの参加や情報の公開を促すなどの発信を行い、NGOらには歓迎されていた。この意味で、3日間を通して各国のさまざまな色合いが見えるおもしろい場とはいえる。
 結果として、2ラウンドが終わって、原案では24パラグラフであったものが、倍増する追加提案が入った。
 午後6時に近づくと、共同議長は、「この会場には、次の予定がある。次は3月にお会いしよう。」と、議論を打ち切り、木槌を打ち鳴らした。


▼3日間の会合が終わる

3 今後の交渉

 今後の成果文書の交渉は、2月29日(水)までに、各国政府からⅢ~Ⅴについての修正提案の提出が求められている。
 11月1日までに国連にインプットしたステークホルダーも、インプットした内容に従い、各国政府を経て主張を行うことが認められている。
 そこで、すでにNGOは、ミーティング直後に会合を繰り返し、各国の交渉官にレターを送付するなどの活動を行なっている。

 そして、次回の非公式な折衝が3月19日(月)~23日(金)に行われ、公式な第1回成果文書交渉会合が、3月26日(月)~27日(火)に行われる。

 ▽ 今後の主要スケジュールは、以下のWebサイトで見ることができる。(英語)
 http://www.uncsd2012.org/rio20/index.php?menu=23

 このときには、すでに各国はそれぞれの国の決定機関を経て、意見提出を終えているので、NGOにとっては、各国のデリゲートの意見を変えさせることは難しい。
 それでも、次回の交渉を有利に進めたり、今後の交渉仲間を探すため、自らの主張を明快に示す、ブックレット(ブローシャー)は、有効に機能する。国連本部やニューヨーク近辺のKINKO’Sのコピー機では、目立つカラー刷りはできない。このため、事前にしっかりとした文書を準備して印刷して持ち込むと有利である。


▼今回は、国連の印刷機で刷ったので白黒の配布物

 一方、忘れてはならないのは、「成果文章」の交渉ばかりに目をとられていると、非公式なプロセスでもさまざま決まっているということである。
 たとえば、成果文書にも掲載されている「グリーングロースナレッジプラットフォーム」は、UNEPとUNDPと世界銀行と韓国の団体が、この会合直前に立ち上げてしまい、カンファレンスとWebページを兎にも角にも作っている。(グリーン経済へのリーダーシップという視点から見れば日本は韓国に出しぬかれていないだろうか?)

 ▽ GREEN GROWTH KNOWLEDGE PLATFORM
 http://www.greengrowthknowledge.org/Pages/GGKPHome.aspx

 また、会合中に予告されたが、ハイレベル会合でも別途レポートが準備されており、新しい社会のコンセプトが別の言葉で語られた。国連が発信されるメッセージは、トーンが先進国が好む「グリーンエコノミーを構築しよう」から、途上国も否定しづらい「レジリエンス(resilience)」に変わってきた。「多発する自然災害の教訓による、防災及びレジリエントな社会を構築しよう」という呼びかけである。

 ▽ 「Resilient People, Resilient Planet: A Future Worth Choosing」
  http://www.un.org/gsp/report

 こうした動き、それぞれに、反応しながら、パートナーを見つけ連帯し、動的に対応を決めてカウンターを打ち返してゆく必要がある。
 このスピード感は、まるでスポーツである。
 日本の団体にありがちだが、「是非を持ち帰り検討」する暇はない。
 組織として事前に、担当者に一任する合意形成が必要であろう。


▼毎朝、情報交換を行う、マルチステークホルダー各代表

4.リオ+20プロセスへの参加

 最後に、読者が忘れてはならない重要なポイントは、さまざまな「締め切り」がもうまもなく続々とやってくるということだ。
 リオ+20の政治プロセスに参加できるのは、団体だけであり、企業や個人や自治体からは参加できない。何らかの団体を通じて参加する必要がある。
 リオデジャネイロでの本会合への参加登録は、すでに始まっており、「国連経済社会理事会の協議資格を有さない/WSSDへの登録実績のない団体」の資格申請の締め切りは、2月20日である。
 国連経済社会理事会の協議資格を有する団体や2002年のWSSDに登録実績のある団体は、すでに参加資格を持っているが、そうでない団体も少なくないはずだ。
 その場合は、以下ウェブサイトの「2.Accreditation of new groups」の記載に従い事務局に対し資格申請を行い、事務局による審査を経た上で5月20日までに登録申請を行う必要がある。

 ▽6月の公式会合の申請手続きについて(英語)
 http://www.uncsd2012.org/rio20/registrationandaccreditation.html

 この際に、各種登記事項(活動内容や定款や財務諸表)が必要の他、参加予定者名などのリストも必要であるので、締め切り直前ではなかなか間に合わない。

 また、「リオ+20公式サイドイベント」の締め切りも、3月30日までに差し迫っている。
 これは、対象者は、加盟国、国際機関、メジャーグループ(NGO)が開催することができるが、主催者のガイドラインには、「たくさん応募があるのでなるべく多くの関係団体と組んで重要なテーマにしないと採用されません」と釘がさされている。このため、パートナー探しに奔走する必要がある。

 ▽ サイドイベント開催申し込み
 http://www.uncsd2012.org/rio20/meetings_sidevents.html

 また、これとは別に、国連社会経済局(DESA)では、能力開発イベント「リオ+20/SDラーニング」のインストラクター(専門家)を募集している。
 これは、DESAが会場とプロジェクターを供与するので、「食料安全保障と持続可能な農業」「エネルギーアクセスと効率性」「安定的な水と土地管理」「持続可能な都市」「海洋管理」「強靭性の改善と防災」「グリーン経済への移行」等のテーマに叶う、価値ある講演を行う事ができるものだ。
こちらの〆切が2月28日であり、国連経済社会理事会の協議資格を有する団体を通して、講師や内容を固めて提案する必要がある。提案後、3月に、投票による選考の末、決定される。

 ▽ SDラーニング開催申し込み
 http://www.uncsd2012.org/sdlearning/

 関心がある読者諸氏は、「リオ+20 地球サミットNGO連絡会」にコンタクトを頂きたい。
 http://sus-cso.com/

                                  以 上


地球サミット2012Japanについて:
 地球サミット2012Japanは、リオ+20に向けて日本の参加の間口を広げるためのプラットフォームとして立ち上げられたネットワークである。
 NGOネットワークではなく、関心とコミットメントが強い個人が参画するためのオープンなNGOである。
 例えば、以下のサイトでは、日本からの「1万件の未来へのコミットメント」を集めている。

 ▽The Future We Want – Japan Voice
  http://voice.futurewewant.jp/

 その他、政策提言チームでは、20年前、13歳の少女 セヴァン・スズキが行った「直し方のわからないものを、これ以上壊さないで下さい。」という伝説のスピーチに応じて、その宿題への回答という形で、国連への提言を行なってきた。

 ▽地球サミット2012Japanからの提言
  http://earthsummit2012.jp/un/policyproposal.html

 今回は、国連が提出したゼロドラフトに対する最初のディスカッションの場に、こうした提言を反映させたいと考えて参画をした。