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【レポート】ブラジル訪問

環境パートナーシップ会議/地球サミット2012Japanの熊沢です。
今年6月末~7月頭にブラジルのリオ・デ・ジャネイロとサンパウロへ出張し、
見聞きしてきたことをご報告します!



出張目的

ブラジルの市民社会が主催する国際的なリオ+20に向けた活動の国際会合(International Seminary: Peoples Summit for Social and Environmental Justice、6月30日~7月2日)に参加するためブラジルを訪問しました。


滞在中のスケジュール:

1週間前
 ブラジル行きが決定!
1~3日目 
 会合参加
4~5日目 
 リオで現地を視察、NGOや研究者の方と意見交換等を行い、領事館の方を訪問
6~11日目 
 サンパウロにて、観光庁の方、日系コミュニティ、
 現地メディアなどの方と交流、在ブラジル商工会議所の会合に参加



   [ 会議の様子: 世界27か国、150ほどの団体が参加 ]



ブラジルでお会いしたいろんな方に頂いたご意見を紹介します。


ブラジル市民セクター主催のRio+20に向けた国際会議

【 会議の論点 】
Rio+20にて政治的に効力を持てるように市民セクターを組織化する必要がある。
市民セクター内でどのように合意形成していくか。
資金をどうするか。
*ブラジルのこれまでの歴史で市民セクターが
まとまれていないという背景を多数の参加者が共有している印象。

【 会議の結論 】
複数のテーマを設定し対話をリアル+WEBでまずははじめる。

補足:
・ブラジルのもっとも大きな社会問題は教育。
 そのほか、労働、土地、女性、先住民などあらゆる分野のNGOが参加。
 教育問題はブラジルの格差をつくっている要因。
 資金面の問題ではなく政策の問題という認識が多い。
・マイノリティを排除しないようにするためにまとまりにくい。
・より持続可能な消費社会に向けて積極的に取り組んでいるNGOは、
 このセミナーに参加していないとのこと。企業と積極的に協力しているため、
 他のNGOからの批判があり対話がなりたちにくい。
・会議でインド・南アフリカからの団体が参加&積極的に話し合う。
 ブラジルの開発に関する研究者やNGOの間では南ー南関係に関する議論が活発。
・G20の話し合いもあり。世界に対してブラジルがいままでなかった発言権
 &その効力を持てる機会になるということを意識している。
・”サミット”という言葉へはみんな批判的。マイノリティーを排除するイメージがあるため。



ブラジル市民セクター会議主催者・事務局

【 会議後の今後の方針 】
ダイアログを通して、いくつかの合意を形成し、対話のプラットフォームを構築する。
※市民セクターを1つにまとめようとしているのではない。
Webにて情報を掲載していく。
来年のイベントではリオ市全体をまきこみたいが、資金的に厳しい。

【 事務局の活動 】
市民セクターと平行で、マルチステークホルダーの団体、企業との連携、
若者団体との連携、グリーンエコノミーなどの活動をすすめている。

ブラジル事情について補足:
・ブラジルの市民セクターは変化の過程にいる。
 -資金援助の状況が変化している。国際的な資金援助が減っている。
 政府からの市民セクターへの支援体制がない。
 資金集めの方法を学んでいるところ。
 -ブラジルの経済成長の結果、食料不足や住宅問題は改善してきて
 以前とは社会問題の訴求方法を変える必要がでてきている。
 政府の課題改善がテーマ。
・ブラジル市民セクターと政府との関わり方
 -政府へ環境政策に取り組むようプレッシャーを
 かけようとしている市民セクター
 -仕事を増やし、賃料を上げるために政府へ協力的に
 サポートしている市民セクター


【 日本に期待すること・その他 】
・日本には、政府が積極的にRIO+20に関与することを期待したい。
 世界各国の人がRio+20に対して今は悲観的で様子を見ている状態。
 影響力のある人が先頭を切って、参加表明して意義を示していく必要がある。
 事務局の方は来日して、日本政府の存在感が強いと感じた。
・Rio+20に向けた、Webなどでのグローバルな規模のプラットフォームの構築は難しいだろう。
 プラットフォームの構築自体がむずかしいのではなく、
 人をそこへ誘導して使うようにすることに大変な労力がかかる。




   [ リオ・デ・ジャネイロ ]


在ブラジル大使館、領事館

【 RIO+20に向けた状況 】
ブラジル政府はRIO+20に関してかなり積極的に情報発信をしているが、
世界にはまだ届いていない。一部熱心な組織は情報をキャッチして問い合わせてくる。
 ワールドカップ・オリンピックに向けて地域の整備が始まっている反面、
 リオの治安は今年3月以降悪くなっている。
 2012年のイベント時は宿はもう予約できないかもしれない。
 国がホテルなどを全部押さえている。街に入るのにもパスが必要になる可能性がある。
 詳細は未定。


JICAブラジル

JICAで行っている日本ーブラジル間の環境活動
 アマゾンの森林伐採の監視を衛星(大地)で行うプロジェクト
 廃棄物の処理方法の技術共有プロジェクト
  サンパウロと大阪が姉妹都市
 技術伝授のプロジェクト
  明治製菓さんアグロフォレストリーなど。
ブラジルは人にやさいい
 「環境・人にやさしいはあたりまえ」というの感覚がブラジルにあるかもしれない。
 ブラジルは格差が大きく、大きな矛盾を国内に抱えているけど、
 1つの国としてやっていこうという意識が強い。
ブラジルと日本の食のつながり
 ブラジルは世界第2位の大豆生産国になり、
 日本の食を支える(豆腐、納豆、醤油等)関係になっている。
ブラジルの日本との信頼関係はブラジル日系人のおかげ
92年の地球サミットの反省を活かし、リオ+20の会議が議論だけの場にならないことを期待する。


環境NGO所属の日系の方

92年のRioの成果物
 Agenda21
 環境教育21の指針(Treaty on Environmental Education) 
Rio+20について
 一般の人はRIO+20のことはあまり知らない。92年の時のほうが認知度が高かった。
 今はWorld Cup, Olympicの認知度は高い。  
 ブラジルではいま水問題も大きな課題。
日本文化のブラジルへの紹介
 日系社会100周年の際に「Mottainai」文化を紹介
 日本人アーティスト等をブラジルへ招待して企画開催を頻繁にしている。
 佐藤琢磨がブラジルの子どもへ”夢”を伝えに来たこともある。
  (ブラジルのF1が佐藤琢磨の夢のきっかけになった)
参考情報:Ambiente Brasil(ブラジルの環境Webサイト)



   [ サンパウロ ]



サンパウロ市観光庁

【 サンパウロの状況について 】
サンパウロ市長は環境問題に関心が非常に高い。
サンパウロは経済成長している最先端の都市を目指すという意味で、
 グリーンテクノロジーへの関心が高く東京と状況が似ている。
 5月に市長の意向でC40を主催した。
リオで開催するリオ+20関連のイベントをサンパウロでも開催できたらいい。


在ブラジル日本商工会議所、メディア

ブラジル(サンパウロ)で日本が好意的に受け入れられ、
 信頼されるのはブラジルで生活してきた日系人のおかげと感じている。
サンパウロは特に最近排気ガスで空気が悪く問題になっている。
在ブラジルの日系企業は、Rio+20については認知度が高くない。
 World Cup, Olympicはビジネスチャンスと捕らえている。
 RIO+20の意義は何なのか。会議だけで終わるのではないか。
 ”環境”に含まれる範囲が広すぎる。
 なにが期待できるのか。具体的な決定事項、その後への影響とは。



後記: 世界と「つながる」ではなく、「つながっている」ということ

今回ブラジルで出会った人たちはみんな初対面だったけれども
地球の反対側の人たちと私の生活は、既につながってできている。
日本がこれからより持続可能な社会へ変化したとき、
それは他国にどう影響するのだろうか。

例えば日本が一斉に環境に”よい”と思うものへシフトした際に、
それはこれまで使ってきた環境に”よくない”ものを大量のゴミと化し、
また市場の変化がグローバル経済の仕組みに組み込まれた他国の人々を
より苦しめる結果も生みかねない。

リオ+20では、日本が考える世界の持続可能な姿を提案することに加えて、
今までとは違う方向性へのシフトを行った際に、経済や貧困、環境に
どのようなグローバルな影響が出るのかという点についてを世界の人と話し合い、
お互いにとってよりよい方法を見つけていく場になるんだと強く思った。





   [ enjoy ^^ ]